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日本に広めたいフランスのお花文化

とかく、フランスには「香り」という言葉が似合う。通りを行き交う紳士淑女が身にまとう洗練された香水の香り、美食家たちを唸らせるフランス料理の深みある香り、夜を妖しく演出する芳しき赤ワインの香り。世界に誇れる素晴らしい香りがいくつも漂う国、それがフランスである。その中から今回は、国全体を鮮やかに彩り包み込む「花の香り」について、フランスのお花文化に深く精通する瀧志穂子先生を迎えて、取り上げていきたいと思います。

先生:フランス人って、ハデなイメージもあるけど、若いうちはとっても質素なんですよね。派手な衣装で着飾ったりもしないし、ブランドモノもほとんど持たないし。逆に年をとっておばあちゃんになると、真っ赤な口紅を付けたりして着飾るんですよね。彼らには若者でも昔のモノを大切にする習慣があって、家々には代々受け継がれているカトラリー(※1)や銀食器があったりするんです。そういうモノを通して見ても、自分たちの国や歴史に誇りを持っているんでしょうね。

ファッションの発信源とも言われるフランスには、オシャレな人々が多くいます。しかし、それはファッション雑誌などに載ってる一時期的な「流行り」モノではなく、自分らしい自然なオシャレを貫いているだけ。それを思うと、日本の町を我が物顔で歩く「自称オシャレ」な人たちがマネキンに見えてしまうのは否めず、先生もこう話す。

先生:日本の女性、とくに若い世代の想像力がとっても乏しいように感じます。どこに行っても同じ髪型をして、同じ服装をして、同じブランド物を持ってて、みんな同じ。もっと個性を持って、自分なりのオシャレを作り出さなきゃね。

フランス人の愛国心の強さは、自分への自信にも繋がり、それが自分らしい生き方やファッションを作り出すのでしょう。それに比べて、古いモノは時代遅れと嫌ったり、「だから日本人ってイヤ」なんて、自分の国を卑下する人間に、自分に自信を持てと言うのは少々無理な話なのでしょう。だからこそ、自分に無いものを持つフランス人を見ると、余計にオシャレでスマートに見えるのかも知れません。

この他にもフランスと日本との違いはたくさんありますが、その一つに今回取り上げる「お花」があります。今の日本では一般的にお花に触れる習慣や場面は少なく、冠婚葬祭などの行事ゴト位でしかその機会がありません。それに比べて、フランスでは一般生活にお花は密着していて、スーツ姿の男性が一輪の花を買い求め、女性にプレゼントするなんて光景はごく日常的なことなのです。

先生:どちらの生活が「正しい」とは一概には言えませんが、やはり美しいお花に彩られた生活を送りたいと思うのが人間らしいのではないでしょうか。

そうおっしゃる瀧志穂子先生は、20歳の頃に習い始めた生花をきっかけにすっかりお花に魅せられ、色んな国の沢山の花たちと触れ合ってきました。その最も心惹かれた場所がフランスでした。そこには魅力的な花が咲き、それに似合う風土があり、それを楽しむ人々がいたのです。それらを実際に見て肌で強く感じた先生は日本にもその素晴らしいお花文化を伝えようと、日本とフランスの架け橋となって、精力的に活動をされてきました。そして、今回のミセスレイコの企画「フランスの香り」の取材についても、日本のお花文化がより活性化されることを望まれて、快く協力を承諾していただきました。

数々の功績や肩書きを持ちながらも、それを全く鼻にかけない気さくな人柄の先生が開くお花の教室「ラ・ミティエ・スタイル」。ここでは、先生がフランスで培ったお花に関する知識や感覚が身に付くことはもちろんその文化や生活などにも触れることが出来ます。現在は、生徒さんを育てることが楽しくて、お花に興味がある人ならいくらでも教えたいと話す先生。取材の際に居合わせた生徒さんもこのように述べる。

生徒:先生は日本人にはない色彩感覚とデザイン性をお持ちなのでいつも驚かされます。それでいて、いつも明るく楽しい先生で、わからない事は何でも熱心に教えてくれます。それに、行動力もすごくあって、私たちが望む夢のような事でも積極的に実現してくれるんです。今年の二月にフランスへ行った時も、ニースのミモザ祭りに参加したり地元の教会でお花の制作をしたりと他では出来ないような貴重な体験がたくさん出来ました。

お花作りをしながら、このように終始笑顔で話す生徒さんの様子を見るだけで、この教室の居心地の良さや先生との距離の近さが垣間見られた。
これまでの多くの経験によって語られる瀧先生ならではのお話。それは、お花だけにとどまらず、フランスの風景や習慣、風土もあわせた様々な魅力も取り上げ、みなさんにたっぷり「フランスの香り」をお届けする予定ですので、お花に興味のない方やフランスを知らない方、女性に限らず男性でも、きっと興味が湧いてくるハズです。それによって、慌しい日常に少しの安らぎと彩りを添えるきっかけになれればと思います。ようやく訪れた秋風とともに、爽やかな「フランスの香り」をお楽しみください。

※1「カトラリー」:食卓用のナイフ・フォーク・スプーン一式のこと。

[文]福田 雄貴 [撮影]上野 玲子

瀧 志穂子(たき しほこ)/ラ・ミティエ・スタイル代表

日本のいけばな草月流を経て、アメリカ、ドイツ、オランダ、イギリスなどの欧米スタイルを吸収。最終的に最も影響を受けたフランスで名門校ピヴェルディ職業ディプロムを取得。更に日本人初のフランスアートフローラルマスターを授与したことで、ピヴェルディ日本校の代表となり、国際コンクールの審査員を務めるなどして精力的に活動。その後、フラワーデザインとカルトナージュの融合作品を提案し、日仏カルトナージュ協会を設立。現在は東京青山に「ラ・ミティエ・スタイル」を開校する。

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