エストニアクラフト紀行
エストニアに伝わるフェルティングアートでネックウォーマーを作ろう!
熱っちぃ温泉と棚ぼた海の幸/常磐線篇(1)
とりあえずの目的は常磐線の制覇だが、後の一切合切は気分次第のお任せ旅
扇子と団扇 こそれぞクールビズ+(プラス)
クールビズ+(プラス)で、注目されているのが携帯できる扇子です。
ハーブのお話「マロー」
マローはアオイ科の宿根草で、コモンマローなどブルーの色のハーブティが、大人気になっています。
スケジュールが空いた週末。春を感じさせるスッキリとした青空に誘われた福田は、ぶらっち旅をすることに決めた。一泊分の着替えを詰めたリュックを背に駅まで来たものの、行き先はまったくのノープラン。はてさて、どうしようかと腕組みをして路線地図をにらむと、気になる路線があった。「常磐線」である。東京の上野駅から千葉に入り、茨城・福島を太平洋沿いに通り抜けて、宮城の仙台駅まで伸びる路線。これまでほとんど乗った事がなく、仙台までの道すがらにある観光地や名産品なども知らないが、もし道中にめぼしいモノが無くてもゴールが仙台であればそこで楽しめるし、宿の心配も要らない。それに、この天気の良さなら車窓の景色も楽しめるはず……。となると、善は急げとばかりに上野駅から常磐線に乗り込んだ福田。とりあえずの目的は常磐線の制覇だが、後の一切合切は気分次第のお任せ旅だ。
列車が千葉県を抜け、茨城県に突入しようかという頃、射し込む光の暖かさに包まれ、ウトウトと何度も眠りに落ちた。その間も列車はガタゴトと走り続ける。都心から田舎風景を横切り、再び高い建物が車窓に目立ちはじめると、水戸駅に到着。ここを出ると、そろそろ海も見えてくるだろうと思い、車窓にへばりつく。が、細切れの海がチラチラと見えるだけで、頭に描く大海原の車窓は現れない。海が近くにあるってのに、これでは完全に消化不良だ……。海を前にすると、どうにもジッとしていられない海を愛する福田。もどかしい車窓に業を切らし、「こうなりゃこっちから見に行ってやる」と、途中下車を決めたが、さてどこで降りればいいのだろう。出来れば海に近い駅が良いが、生憎この辺りの土地勘はゼロ。そこで、駅名を頼りに福田が降りた駅は、大津港駅。(写真下:駅前に佇む赤レンガ倉庫/茨城県・大津港駅)
名前に「港」がついて、海が近くないはずが無く、ひょっとすると駅前からのパノラマオーシャンビューだってありえるぞ。なんて鼻息荒く改札を出た福田を出迎えたのは、大海原はもちろん磯の香りを含む潮風さえなかった。それもそのはず、地図を見ると駅から海までの距離約2.5キロ、歩けば30分はかかるだろう……。うーん、どうやら完全なるミスチョイスのようだ。高まっていたテンションもごっそり削ぎとられる。別の駅へ移動しようにも、次の列車到着まで1時間……オージーザス……。そんな意気消沈な状況の中で、唯一嬉しい材料が駅前に建っている。赤レンガ造りの倉庫だ。歴史ありげな佇まいだが、一体なんだろう?聞いてみると、この辺りが活気ある港町だった明治の頃に建てられた海産物を保管する倉庫らしいが、炭鉱の閉鎖や流通の変化に伴い、昭和の中頃に御役御免になったとのこと。そのため、今は倉庫としての機能は果たしていないが、街の歴史を無言で語る重要な遺産になっているようだ。しかぁし、それにも関わらず、どこかの不届き者が意味不明な落書きで壁を汚していた。一体何を考えているのだろうか。落書きがしたいなら、自分の顔にでもしてほしいものだ。
赤レンガ倉庫のおかげで若干気分を盛り返した福田は、とりあえず海を目指し歩き始めた。人も車も少なく閑散とした港町をトボトボ歩いていると、視界の先でモクモクと煙が上がっていることに気付く。まさか火事?一瞬ヒヤッとしたが、近づくとその煙が、イワシから湯気だとわかった。というのも、そこは煮干しを作っている工場で、大量の茹でたイワシが工場の前にある空き地に並べられていたのだ。これが乾燥すると煮干しになるという。その光景を写真に撮っていると、「こんなの珍しい?」と作業していたおばあちゃんに声をかけられる。「火事かと思いました」と言うと高らかに笑われた。写真を撮り終えて去ろうとすると、おばあちゃんが茹でたてのホカホカイワシを一匹くれた。味は、煮干というより、ちりめんじゃこのようだった。(メイン写真:茹でたてのイワシたち)
思わぬ頂き物に、俄然元気を取り戻した福田は軽やかな足取りで海を目指す。着いた大津港はなかなか大きかったが人影は少なく、まばらに釣り人の姿があるだけだった。他にも、これと言って目を引く物はないが、ただ海を見るだけで満足な福田は、ガランとした港をぶらりとする。空は相変わらず青く晴れ渡り、春を思わせる程に心地良いが、海風にはまだまだ冷たさが残っている。適当に歩き終え、踵を返す頃には、体はすっかり冷えていた。体を温めるように急ぎ足で駅に向かうと、見覚えのある建物が目に入る。さっきの煮干し工場だ。空き地の方を見ると、先ほどは面積の半分にも満たなかったイワシが、福田が港をぶらっちしている間に、隅々にまで並べられていた。まったくご苦労なこった、なんて感心をしていると、「これ食べるかい?」と不意に声をかけられる。おばあちゃん再登場だ。差し出されたのは、ほんのりピンク色をした親指サイズのミニイカ。煮干しとなるイワシに混じって茹でられた混在物はここで一つ一つ手作業で除去するらしく、このイカもその一つらしい。食べると、小さいながらも甘く濃厚なイカの風味が広がる。「美味い!」と言うと、おばあちゃんは「じゃあこれも、これも、ホラこれも、持って行きな」とかき集めた10匹ほどのミニイカを手の上にコロンコロンと乗せてくれた。またもや予期せぬ海の幸をゲット。どうやらここにいれば、食べ物には困らないようである。
大津港駅から北上すると茨城県から福島県に入る。その最初の駅が読み方が難しい勿来(なこそ)駅。更に北上すること30分と少々、立派な駅舎を持ついわき駅に到着。駅前には大きなビルが建ち並ぶ栄えた街だった。ここから乗り継ぐと、終点の仙台駅までノンストップで行けるが、それじゃあもったいない。ぶらりぶらりと寄り道してこそのぶらっち旅。そこで目をつけたのが、四ツ倉駅。理由は、駅の近くに「道の駅」があり、そこで海の幸も食べられるというのだから、行かない手はない。(写真下:あなご天丼/福島県・道の駅よつくら港)
その四ツ倉駅に到着したのは、太陽がそろそろ傾き始めようとする頃だった。駅から10分も歩かず広い砂浜を持つ海岸に出れる立地で、大津港駅より断然に近かった……。海岸沿いに歩くと、目的の「道の駅よつくら港」が見えてくる。すぐ目の前にはヤシの木が並ぶ砂浜もあり、ロケーションは申し分ない。建物内には土産物屋や飲食店が並び活気があった。早速、海の幸をいただこう。茹でイワシ、ミニイカに続き、本日三つ目の海の幸に選んだのは「あなご天丼」。近海で獲れたという肉厚の穴子にサクサクの衣、それに味噌汁などもついて、お値段700円はなかなかのコストパフォーマンス。あっという間に丼を空け、味にも金額にも満足した福田は、青空と夕空のくっきりとしたコントラストが浮かぶ水平線を背に、駅へ戻った。列車のシートに腰を下ろす頃には、車窓は濃い闇に包まれ、終着点の仙台駅に着いた時には、時計は21時を過ぎていた。
次回のぶらっちニッポンは、熱っちぃ温泉と棚ぼた海の幸/常磐線篇(2)を予定しております。お楽しみに。
[文・撮影]福田 雄貴
‘77年大阪生まれ。大学卒業後に建築設計事務所、TVCM制作などを経て現在は東京に拠点を移して、フリーライターとして活動中。
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マローはアオイ科の宿根草で、コモンマローなどブルーの色のハーブティが、大人気になっています。